学校のトイレ研究会研究誌25号
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──バリアフリー化をうまく推進するためにはどのようにしたらいいのでしょうか。髙草木 大切なのは、自治体として何から着手するのかという「優先順位」をつけることです。バリアフリートイレやエレベーターなどの配慮が必要な児童・生徒が、いつその学校に入ってくるのか。その子の保護者は何を望んでいるのか。ニーズを踏まえて計画に盛り込んでいく必要があるので、そういった事前のコミュニケーションは欠かせません。また、その学校の地域の位置づけを考えることもおすすめしています。施設の中には、学校としての機能だけではなく、災害時には避難所となったり、地域の拠点として公共施設と複合化したりするところもあります。公共施設全般の中でその学校がどのような役割を果たすのか、通常時の地域利用も踏まえた、設計段階からの計画づくりが重要です。──日頃の学校としての機能はもちろん、避難所や地域開放などの機能も考慮する、ということですね。髙草木 されるのならば、避難の際にどれくらいの高齢者や、障がいのある人が利用するかを考える必要があります。乳幼児がいる家族も利用するでしょう。そうなると、児童・生徒が普段利用する想定だけでなく、バリアフリートイレやスロープ、エレベーター設置など、さまざまな利用を踏まえた設計計画が大切になってきます。これまでの古いトイレは「児童・    生徒だけが使うもの」としてつくられてきたかと思います。しかし今後は、利用者のニーズを反映した「誰もが使える」トイレになることが理想です。──おっしゃる通り、普段は特別支援学校へ通っている子どもも災害時には避難所を利用する可能性がありますね。髙草木 は基本的に市区町村の居住地を中心としています。普段は都道府県立の特別支援学校に通っている児童や生徒も、避難所としてその学校のトイレを利用する可能性があります。障がいのある子どもがいない学校だと、そのような想定を行うのはなかなか難しいとは思いますが、いざというときのために、困る人が少なくなるような設計を仮に避難所として利用そうです。避難所指定意識してほしいと思います。──障がいのある方の利用を踏まえると、どのような設備が理想でしょうか。髙草木 特別支援学校などへ行くと、ニーズが顕著に現れているので参考になるでしょう。トイレに大型のベッドがついていたり、近くにシャワーブースや、オストメイト対応設備があったり。特別支援学校が近くにない場合も、各自治体の建築士や防災士などの有識者に相談してみるのも一つの手です。最近では、障がいのある子どもや保護者から「市区町村の学校に通いたい」という声が増えてきていますので、そのことも踏まえた計画も必要となるでしょう。地域に障がいのある方がどのくらいいるのか、個人情報なので、避難所や地域開放トイレの機能が多様化バリアフリー対応感染症対策老朽化対策災害対策長寿命化対応ダイバーシティ(多様な利用者配慮)環境配慮(節水・省エネ・CO2削減)清掃管理・メンテナンスの強化「バリアフリー対応」が74%でトップに。バリアフリーが重要だという認識は広まっていることがうかがえる。学校のトイレ研究会「2021年度全国自治体アンケート調査」より。n=91(複数回答) *上位8位まで。データ詳細は16ページ参照 34%29%24%22%12%10%56%車いす使用者トイレの整備について、文部科学省は2025年度までに避難所指定のすべての学校に整備することを目標としている。出典:文部科学省「学校施設におけるバリアフリー化の加速に向けて」(2020年12月)を一部加工12対 象車いす使用者用トイレ65.2%36.9%78.5%74.4%57.3%57.0%27.1%65.9%門から建物の前まで昇降口・玄関から教室まで2020年度(現状)屋内運動場校舎(体育館)スロープなどによる段差解消エレベーター1階建ての建物のみ保有する学校を含む2025年度末までの整備目標避難所指定のすべての学校に整備すべての学校に整備すべての学校に整備要配慮児童生徒らが在籍するすべての学校に整備総学校数の約95%に相当総学校数の約75%に相当Q.今後、学校トイレ整備を考える上で、特に重要と思うこと74%■文部科学省 学校施設のバリアフリー化 整備目標■最重要項目は「バリアフリー対応」

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