学校のトイレ研究会研究誌25号
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正確な数を把握するのは難しいとは思います。建物の基本設計を考える際に、アンケート調査やワークショップ、住民説明会などを行って、地域住民の声を積極的に集めることをおすすめします。──公共施設として機能している場合、ベビーチェアやおむつ交換用の設備、フィッティングボードなど、異なる設備が必要となりそうです。髙草木 地域開放をしている場合、先述のように障がいのある方の利用はもちろん、小さい子どもを連れた保護者がPTAなどのいろんな活動で使用することも想定されます。公民館と複合化している学校では、高齢者が日常的に利用しているはずです。いずれの場合も、その学校にはどのような方が来るのか、配慮やサポートが必要な方はいるのか、実際に地域の方とコミュニケーションを取って設備計画に盛り込んでいく必要があると言えます。──近年の水害での被害を考慮すると、留意すべき点はありますか。髙草木 の可能性がある学校は、そのような意識を持って設計計画を立てることが大切です。仮に1階のみにバリアフリートイレがあると、水没してしまった場合に機能しないことも想定されます。これまで視察した自治体の中には、予算や敷地面積の関係ですべての階にバリアフリートイレを設置できなかった場合でも、例えば建物の5・6階にバリアフリートイレを設置し、1階からそこまでスロープで行き来できるようにするなど、工夫の見られる事例もありました。──バリアフリー化を推進するに当たり、何か指針となるようなものはありますか。髙草木 施設バリアフリー化推進指針」を2020年の12月に改訂しましハザードマップを見て水害文部科学省では「学校た。バリアフリーの設備について、設置が望ましいものから「重要である」「望ましい」「有効である」の3段階で表記しています。例えば「誰もが利用できる便所」の項では「洋式便器を採用するなど、生活様式や児童のニーズ等を踏まえた便所を計画することが重要である」と記載しています。もちろん、各自治体で予算やニーズも異なりますから、「重要」の項目を中心に、地域の声を踏まえて何をどこまで実施するかのガイドラインとして参照いただければと思います。また、文部科学省では学校施設のバリアフリー化の加速に向けた取組事例集を取りまとめ中です(取材時時点)。学校トイレの整備において参考     になる自治体の事例が数多く掲載されます。ぜひご活用ください。──すべてを網羅できれば理想ですが、自治体の状況に合わせて取り組んでいく、ということですね。はい。記載している項目髙草木 の中でも、個人的にバリアフリー化の前提となる便器の洋式化は、時代の流れから見て採用してもいいのかなと思っています。まずは、バリアフリーの観点を設備計画に盛り込んでいただくこバリアフリー化の本格的推進に向けて大阪府兵庫県滋賀県福岡県京都府神奈川県奈良県広島県和歌山県三重県全国      96.4%     87.1%     86.7%    83.8% 82.9% 80.6% 79.9% 79.4% 78.4% 78.1%65.2%京都府福岡県奈良県山梨県沖縄県石川県富山県滋賀県兵庫県神奈川県全国 62.5% 60.8% 58.8% 55.6% 54.9% 51.3% 50.4% 50.3% 47.2% 46.8%36.9%*文部科学省「学校施設におけるバリアフリー化の状況調査の結果」(2020年12月25日)より作成。*校舎、屋内運動場ともに「車いす使用者用トイレ」設置校数割合の上位10位までの都道府県を抽出し、全国の値を付した。*数値は都道府県別の「全公立小中学校数」に対する「車いす使用者用トイレ」の設置校数割合を示す。*設置校数の割合が上位10位の都道府県13全公立小中学校バリアフリー化の状況[車いす使用者用トイレ][校舎][屋内運動場]学校トイレのバリアフリー最前線!

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