学校のトイレ研究会研究誌25号
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「心の中に“もやもや”とした不安を抱えている生徒たちの、解決策になればと思ったのです」香芝市教育部教育総務課の玉村晃章さんは力強く語ります。香芝市では施設の長寿命化、老朽化対策の一環として、学校トイレの床を湿式から乾式に、そして、和式便器から洋式便器への変更を進めています。その中でも、香芝東中学校は男女別トイレの改修に併せて、性の多様性へ配慮した男女共用の「だれでもトイレ」が新設されました。 「だれでもトイレ」はその名前の通り、誰もが自由に使用できるトイレです。トイレ内には手洗いも配置されており、用足しから手洗いまでの一連の流れを個室内で行うことができます。学校生活において、毎日必ず利用する場所の一つであるトイレ。そんなトイレを「全員が落ち着いて使用できるように」という思いを込めて、今回新たに設けられました。トイレの入り口は一つに設計されています。入り口を抜けると、男子トイレ、女子トイレ、そして「だれでもトイレ」と分かれ、廊下からは生徒がどのトイレに入ったのかわからないよう動線が工夫されています。「少しでも『だれでもトイレ』を多く設置した方が、利用が促進される」(玉村さん)と、改修前の男女別トイレの一角を削り、2ブースを設置しました。 個室内にはフィッティングボードが備えられており、教室での更衣に抵抗のある生徒が、トイレで着替えを済ませることも可能です。 男女共用個室トイレは香芝市にとっても初めての試みでした。この結論にたどり着くまで、多くの議論が交わされたといいます。 「男子生徒が使った後に、女子生徒が抵抗なく入ることができるのか。新設したところで、本当に使用してもらえるのか。反対の意見もあり、悩みましたね」(玉村さん)設備が多くなることで、工事費用が高くなってしまうことも争点でした。「これからの時代」の前例に新しいトイレで多様性を考える生徒の“不安”を消してあげたい「だれでもトイレ」はなくてはならないもの1階バリアフリートイレ入り口と、男女別トイレ入り口。トイレは入室すると、自動で照明が点灯する。    左より小西友吉さん(香芝市教育長)と、玉村晃章さん(香芝市教育部教育総務課)27学校トイレ事例05改修奈良県香芝市香芝市立香芝東中学校

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