学校のトイレ研究会研究誌25号
28/32

香芝市ではその後、愛知県豊川市の小学校を訪れ、男女共用のトイレを視察して回ったり、性の多様性に関するセミナーを受講したりと、教育委員会内でも知識を深めていきました。その結果、「あった方がいいということではなく、なければならない子がいることがわかりました」(玉村さん)と、設置を決定しました。香芝東中学校は標準服においても生徒たちへの配慮がなされています。2020年に導入された新しい標準服では、ブレザー、ポロシャツは男女ともに同じデザインに設定。ネクタイやリボンといった、男子らしさ・女子らしさを表す装飾品は採用されていません。そして、性別を問わず、スラックス、スカートどちらでも好きな方を選ぶことができます。 「寒い日に、女子生徒がスラックスをはいて登校しているのを何度も見かけたことがあります」と、香芝市教育長の小西友吉さんは話します。香芝東中学校の1階には、車いす使用者もゆったりと利用することができるバリアフリートイレが設置されています。バリアフリートイレには温水洗浄便座を採用。オストメイト対応設備やフィッティングボードも備えました。改修前の香芝東中学校のトイレは、いわゆる5K(汚い・臭い・暗い・怖い・壊れている)に近い状態でした。新しく生まれ変わった学校トイレは明るく清潔で、井上直規校長先生(取材時)は「子どもたちも、以前よりトイレを大切に使うようになりました」と語ります。学校に通う生徒からも「ホテル     う学校もどんどん出てくると思いのトイレのようになってうれしい」「これまでは、トイレから出入りするたびに古い扉のきしむ音が響いて恥ずかしかった」「前はトイレへ行くのを我慢していた。今は気軽に使用することができる」と喜びの声が多数届いています。利用が懸念されていた男女共用個室トイレも、「初めは使う人が少なかったけれど、今はいろんな子が出入りしているようです」と、女子生徒は語ります。 「子どもたちは自分が通う学校を選ぶことができません。今後も改修を推進し、できる限りの学習環境を整えてあげたい」(玉村さん) 「いい事例ができたら、それに倣ます。教育現場にそうした好循環が生まれることを期待しています」(小西さん)少しずつ、学校が変わっていくのを実感1階女子トイレ。利用時のプライバシーに配慮し、大便器ブースには擬音装置を設置。荷物置き棚は学校の要望で備えた。1階バリアフリートイレ入り口。中にある設備が一目でわかるよう、サインが大きく掲げられている。1階バリアフリートイレ。車いす使用者も利用できるゆったりした広さに、オストメイト対応設備や温水洗浄便座を備えた。1階女子トイレ。手洗いは自動水栓を採用。各トイレには液体石けんも設置されている。(上)1階トイレのピクトサイン。男女の色分けをせず、色味はブラウンに統一した。(右)SDGs学習の一環として、学校内でトイレアンケート調査を実施してまとめたレポート。約9割の生徒が「使いやすくなった」と回答。28

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る