学校のトイレ研究会研究誌25号
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香春町立香春思永館は、町立の小学校4校と中学校2校を統合し、2021年4月に開校した9年制の義務教育学校です。全国的に少子化が進む中、香春町も例外ではありませんでした。児童・生徒数の減少が著しく、今後、複式学級の可能性もあったといいます。また、築40年を超える校舎の老朽化といった問題もありました。香春町では子どもたちにとっての最適な教育環境づくりを模索した結果、施設一体型の香春町立香春思永館を開校。香春町立香春思永館では、9年間を通じた教育課程の編成、および指導計画を作成し、系統的な教育を実施していくことを目標に掲げています。1年生から9年生まで、体格や個性も異なる児童・生徒たちが9年間学びの期間を共に過ごす学校施設では、子どもたち同士の交流が促進されるよう、さまざまな工夫が見られます。例えばトイレの場合、トイレにベンチを配置したり、アイランド型の手洗いコーナーを設けたりと「楽しい雰囲気になるように心がけた」と話すのは、設計を担当した梓設計の篠原綾さん。 「トイレは授業の合間にほっと一息つけたり、違うクラスや学年の子とお話しできたりと、交流の面でも重要な場所です」9年間同じ施設で学ぶ子どもたちが成長を実感できるよう、内装にも変化を持たせました。香春町立香春思永館では男子トイレは水色、女子トイレは黄色をアクセントカラーにしています。まだ学校生活に慣れていない低学年のトイレでは、淡い色味や鮮やかな差し色を用いて軽快な雰囲気に。そして中学年、高学年と進級するにつれて、色彩に落ち着きを持たせたり、木目素材を用いたりと、工夫が施されています。木目素材は、新しい学校を考える際に実施されたワークショップで「香春町は自然が豊かなところ。トイレ内にも木のぬくもりがあるとうれしい」という、当時の中学生生徒の意見が採用されました。すべての人にやさしい施設を9年制の義務教育学校が誕生子どもたちの成長を実感できる学校トイレ2階北男子トイレ。トイレ内のベンチは休憩をしたり、荷物を置いたりするなどして利用されている。手洗い場は自動水栓を採用した。     3学校トイレ事例01か  わ  ら                           し    えい    かん新築福岡県香春町香春町立香春思永館

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