学校のトイレ研究会研究誌26号
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子どもたちに最適な教育の場をリアフリートイレの大便器は温水洗浄便座、それ以外のトイレは暖房便座を採用しています。すべての学年が利用する2階に個室トイレを設けること、各階にバリアフリートイレを置くことで、性的マイノリティや、一人になりたい児童・生徒が違和感なく利用できるよう配慮しました。その他にも、低・中学年が主に利用する1階と3階のトイレの一部は、手洗いコーナーをトイレの外に出しています。これは、手を洗いながら友達と話したり、交流したりできるような、ラウンジ空間を目指したためです。高学年の教室付近のトイレは、トイレ内で身だしなみを整えられるよう、内側に手洗いを設置しています。感染症対策の観点から、トイレ内の手洗いは自動水栓を導入しました。稲築東義務教育学校は、建物全体の色を抑え、サインに目が向くようにデザインされているのが特徴です。各学年のエリアの壁には、八角形のピースが集まってできたサインが施されています。ピースには、市産材の杉が用いられています。 「ピースに着色をしたのは、統合前の稲築東中学校の生徒たちです。稲築東義務教育学校の開校後は、高学年の生徒が低・中学年の子どもたちに、ピースのつくり方を伝えていってもらえたらと思います」(野原春花さん) 「卒業する際は、自分がつくったピースを思い出に持ち帰ってもらい、新たに入学した子どもたちが、自身のピースを製作するという循環ができればと考えています」(野原啓司さん)八角形にしたのは、円形よりも、児童・生徒がノコギリなどでカットしやすいからだといいます。また、コンクリートや木などの素材を、意匠としてそのまま活かすことで、建物の構造や成り立ちがわかるようにしています。 「授業などで、そういった点についても触れてもらえたらうれしいです」(野原啓司さん)嘉麻市教育委員会教育総務課        「教育がよくなれば、嘉麻市にの山本匡貴さんは語ります。住む人や、働く人も増えると思います。そうなれば、必然的に人口も増加します。学校を起点に、まずは子どもたちにとって最適な環境を整えてあげることができればと考えています」3階男女別トイレとバリアフリートイレ入り口。トイレのサインは取り外しが可能。(右)2階個室トイレ内の手洗い。トイレ内は自動水栓を採用した。(左)3階男子トイレ大便器ブース。大便器は暖房便座。3階トイレ前の手洗いコーナー。手洗いを外に出すことで、さまざまな学年・クラスの交流を目指した。図書室を共用部と一体とすることで、アクティブ・ラーニングを促している。サインは生徒たちが着色。今後、新しいピースをつくって、内側を埋めていく。3階女子トイレ。ジェンダーの観点から、赤などはっきりした色でなく、淡い色彩の壁床材を使用。大きな本棚で構成された図書室は、稲築東義務教育学校の特色の一つ。

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