学校のトイレ研究会研究誌26号
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トイレ計画は学校全体で考える多様性配慮と分散配置がカギ学校のトイレ計画は、校舎の全フロアや体育館などすべての施設の中で総合的に考えていく必要があります。前ページでは、主に共用エリアにおけるトイレの分散配置のアイデアを紹介しました。そこで主役となるのは、利用者である児童・生徒をはじめ、地域の人たちであり、障がいのある方や要介助者、高齢者や乳幼児連れ、性的マイノリティなど、実に多様な人たちの存在を尊重しなくてはなりません。また、児童・生徒の中にも、障がい者やオストメイト、性的マイノリティは存在します。現時点で在籍していないからといって、この先もずっといないとは限らず、今後どのような支援が必要になるかもわからないのです。そして、その子たちがトイレに対してどのような不安を抱えているかを理解するのも難しいかもしれません。例えば、小学校全体では発達障がいの可能性のある子が10・4%に上るとされています。発達障害・自閉症スペクトラムの子は外出先のトイレに行くのを怖がる傾向にあり、その理由もさまざまです。 「インクルーシブ教育」は障がいのある子もない子も、支援のもとで共に学ぶシステムです。これを打ち出す文部科学省によって、小中高校と特別支援学校の一体化運営が2024年度にも試行されようとしています。このため、各階の児童・生徒エリアにも、男女別トイレと併せ、広さのあるバリアフリートイレや男女共用トイレの併設をおすすめしています。いつ誰が必要となるか、今後どんな子どもが就学するかはわかりません。また、特別支援教室が何階に来てもいいように、将来の受け入れに備えて、1カ所だけでなく各階に設置することが望ましいとされています。バリアフリートイレは、校舎の1階と体育館に設置すれば解決するというものではありません。介助者と一緒に入れるトイレ、乳幼児連れの機能を備えたトイレ、性別にかかわらず利用しやすい男女共用トイレなど、適切な機能を選択して組み合わせ、かつ分散配置することが最も正解に近いように思えます。その上で、限られたスペースを有効に活用しながら、学校施設全体で整備していくことが期待されているのです。学校関係者は、一度これまでの学校ト       イレの固定観念を壊す必要があるのかもしれません。学校トイレは、ここで分類したエリアの違いを問わず、より多様な人たちへの配慮が求められています。また、機能面の充実にとどまらず、適正な分散配置計画や、将来を見据えて柔軟に変化・対応できる仕掛けや備えなど、あらゆる利用者との対話を反映したものでなくてはならないでしょう。●男女別トイレとバリアフリートイレを併設したプラン例男女別トイレと併せて、各階にバリアフリートイレや男女共用トイレを配置エレベーター広めトイレバリアフリートイレ広めトイレ/オストメイト配慮バリアフリートイレ広めトイレ/乳幼児連れ配慮バリアフリートイレ/オストメイト配慮教職員トイレ昇降口外階段男女別トイレ男女別トイレバリアフリートイレ/大型ベッド・オストメイト配慮男女別トイレ男女別トイレマンホールトイレ児童・生徒エリアも機能分散の発想でプランニングしようトイレが子どもたちのストレスにならないよう、全体を元気が出る色合いでまとめた、カラフルで楽しい雰囲気のプランです。「自分たちのトイレ」という意識が高まり、長く大切に使い続けられるようになります。3F2F1F校舎棟体育館棟

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