学校施設は、子どもたちの教育の場であるとともに、地域の防災拠点として公共施設の役割を果たすことが求められています。近年、気候変動の影響で気象災害が頻発化していることもあり、現在では、公立小中学校の約95%が避難所に指定されています。避難所としての防災機能整備として、施設の安全性の確保はもちろんのこと、必要な機能の確保、円滑な運営方法の確立、避難生活と教育活動が共存できる環境が必要です。トイレにおいても同様で、文部科学省の「避難所となる学校施設の防災機能に関する事例集※2なトイレの数の確保」と、「断水時もトイレが活用できるようにすること」、「避難者の居住スペースから近い場所に洋式トイレやバリアフリートイレを確保すること」が重要とされています。常設トイレの洋式化やバリアフリー化などをあらかじめ整備しておくことで、マンホールトイレ、簡易トイレ、携帯トイレなど複数の対策を組み合わせることが容易となり、利用状況や利用者数に応じた運営がスムーズになります。また、被災後の学校教育活動の早期再開は、復旧復興の第一歩です。避難生活と教育活動の共存においては、避難所用として利用できるトイレの場所、数、防犯対策などを計画した配置・動線計画が重要となります。例えば、避難エリアと教室の間を管理シャッターで区切って、校舎内のバリアフリートイレを避難所用として開放できるようにするなど、平時と緊急時の両面からトイレ計画を考えておくことも有効です。」によると、「必要避難生活と教育活動が共存できる環境災害対策と防災機能の強化新しい時代の学びを支える学校トイレのあり方現在、公立小中学校施設の約8割が築25年を経過し、老朽化のピークを迎えています。文部科学省の「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について※1は、子どもたちの多様なニーズに応じた教育環境の向上を目指し、学校施設の長寿命化を図る老朽化対策の一体的整備と、その支援事業が進められています。それらを受けて、全国の自治体では、学校施設の長寿命化改修や統廃合による建て替えを含む再整備が計画され、学校トイレにおいても、洋式化、乾式化を中心とした整備が着々と進んでいます。公立小中学校の洋式化は68%(23年9月)まで進みましたが、洋式化がゴールではありません。10~20年後を見据えた中長期的な将来設計も踏まえて、計画的・効率的にトイレ施設整備を推進するために、どんなことを考えていけばよいのでしょうか?今号では、学校のトイレ研究会が、学校トイレの現場を見て感じた変化『災害対策と防災機能強化』『インクルーシブな環境整備』『公共施設との複合化・集約化』の3つの視点から、“新しい時代の学びを支える学校トイレのあり方について考えていきます。」で特 集 ” 1災害時に備えて敷地内に整備されたマンホールトイレ。(豊中市立庄内さくら学園)
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