■トイレ内のレイアウト次第で使い勝手が変わります
ほとんどの学校トイレは、同じ場所に男女のトイレが隣りあわせに設けられています。一般的な改修で場所を移動したり面積を広げるのは、なかなか難しいでしょう。少子化を
反映して空き教室を利用している例も見受けられますが、そうはいかな
い場合のほうが多いと思われます。
そこで、男女隣合せであったトイレを一体化して専用とする例が増えています。床面積が倍になってゆとりが増え、多目的トイレや広めのブースを設けることができます。
この場合、多目的トイレの入り口を別に設けて、異性でも使えるような配慮がしてあると、1フロアにトイレが1ヵ所でも、比較的スムーズに受け入れられるようです。
また、多目的トイレを各フロアに設置する余裕がない場合には、学校
開放などを視野に入れて、1階に設
ける例も多く見られます。
男子トイレの場合、大便ブースに入るところを見られるのを恥ずかしがる傾向があります。そこで、小便ゾーンと大便ブースの間にスクリー
ンを立てたり、ゾーンとして分けるように計画する例もあります。
手洗いの位置も、トイレに入ってすぐの壁際ではなく、中央部にアイランドタイプで置かれている例が増えています。さらにトイレ内にベンチや花台なども設けられて、だんだんと居心地のよい場所になってきました。ただし、便器や手洗いだけでなく、ベンチや花台などともに動線に配慮した無理のない配置計画が必要です。
クラスの編成替えによって、仲良しの友だちといっしょに時間を過ごす場所が校舎の中に少ない子どもたちにとって、改修されてきれいになった学校のトイレは、コミュニケーションの場となっています。ですから明るく安心できる場であることが望まれます。
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男女併設トイレから専用トイレへの変更例。
男子トイレには大便ブースと小便コーナーとの間にスクリーンが、大きめブースはいずれも入り口に近いところに設けられています。 |
太田市立韮川小学校のトイレレイアウト。多目
的トイレの入り口が別になっており、大便ブー
スと小便コーナーとがスクリーンによって仕切
られています。 |
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太田市立東中学校の円弧状にレイアウトされた
小便器。隣が真横ではないので、落ち着いて用
が足せると好評です。 |
豊中市立千成小学校ではへちま型のアイランド
タイプの手洗いが設けられました。 |
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世田谷区立富士中学校のトイレ改修例。階段踊り場のレベ
ルにあるため、通りかかる人が多く、内部まで見えないように工夫されています。また、手洗いもアイランドタイプが採用されています。 |
■操作性を考えた設備の配置
トイレに入るたびに、スイッチやボタン類、トイレットペーパーの位置が違うとまごついてしまいます。
どこのトイレにいってもわかりやすい配置となるよう、室内照明のスイッチの位置や高さは入り口からの距離を共通にします。小学校の場合には体格差を考慮して、高低ふたつ用意するのもひとつの方法です。
ブース回りでは便器を基準に洗浄
ボタン、紙巻器、手すり、非常ボタンなどの位置を共通化します。
■体格差に対応
小学校の低学年と高学年では大きな体格差があります。
その対応策として、それぞれに相応しい大きさの器具を使用したり、設置する高さを調整することが望ましいといえます。
たとえば小便器は低リップタイプの便器を使用することによって、さまざまな体格の子どもたちが無理なく使用することができます。
洗面台は洗面器の高さを学年毎に変えたり、また、同じ場所でもひとつは低い高さのものを設置するなどの配慮も必要です。
一方、踏み台のような補助具の利用もあります。既製のものを選ぶ場合には、転倒や破損、踏み外しなど、安全性に配慮する必要があります。
これまでに自作した例もいくつか見ました。いずれも十分に使い勝手を検討した上でつくられています。
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一般的なリップ高さ420mmの場合。身長の低い子どもや低学年には使いにくい。 |
リップ高さ350mmの場合。身長にかかわらず
誰にでも使えます。 |
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成人用便器(H=約400mm)だと、小さい子ではかかとが床から浮いてしまい、体が不安定になります。 |
小学校用(H=約330mm)の便器だとかかとが床につくので、安心して使えます。 |
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手洗いカウンターが一直線に延びていると、清掃性はよいのですが、体格差に対応しきれません。そこで、段差のあるカウンターにします。 |
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