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  事務局長 河村 浩
(撮影:本間伸彦)

1990年代、オフィスや商業施設のトイレが次々にきれいで快適になっていく中、本来なら最も衛生的であって欲しい学校トイレが取り残され、数多くの現場を調査した結果、まさに5K(臭い・汚い・暗い・怖い・壊れている)の温床でした。床・壁・ブース・器具による空間設備づくりはもとより、出来上がった後の清掃メンテナンスまで含めた一貫したあるべき姿の追求が必要と考え、1996年に業種の枠を超えてトイレ関連企業が結束して、『学校のトイレ研究会』を発足しました。発足以来、1.学校現場の声を聞く、2.ユニバーサルデザインを追求する、3.衛生性を科学するの3つの柱を軸に、調査・研究を重ねてまいりました。

1.学校現場の声を聞く
2015年に全国教職員に実施したアンケート(*1)では、パソコンや空調機など全てをおさえ、学校施設改善要望の第1位がトイレでした。また、数多くの子どもたちのアンケートの自由記入からは「虫がおる」「僕は真ん中のブースが好きだ」など、学校トイレが子どもたちの生活の場であることが伝わってきます。「きれいに改修しても、所詮気の弱い子はトイレに行けないのでは?」という声もありますが、それは違います。改修前後の子どもたちへのアンケート(*2)では、トイレを我慢してしまう理由の大多数が、汚くて臭いからと和式便器だからで、改修後には激減してます。同アンケートで更に注目すべきことは、大便をするとからかわれるからと答えた子どもたちが、改修前後で7人から0人になっていたことです。あまりに汚いトイレのイメージが、子どもたちのコミュニケーションにまで、陰湿なイメージを与えているのです。子どもたちは大人と違ってトイレを選べません。子どもたちの気持ちに寄り添って考えていくことが全ての原点です。

2.ユニバーサルデザインを追及する
学校は通常時は子どもたちや教職員ですが、授業参観や地域開放時、そして災害時にはあらゆる方が避難される、最もユニバーサルデザインが求められる施設です。誰もが使いやすくをテーマに掲げることは簡単ですが、それを具体的に実現することが重要です。学校のトイレ研究会とその参加企業では、脊髄損傷や片麻痺、脳性麻痺の方、オストメイトや視覚障害をお持ちの方、高齢者や子ども、親子連れなど多くのモニターの方々にご協力いただき、トイレ内の動作検証を研究してきました。子どもたちには子どもたちに適した寸法があります。これらに基づき、空間寸法や器具、手すりの位置を提案してまいりました。言うまでもなく、和式便器は多くの障害をお持ちの方にとって致命的であり、転倒などの危険性を伴います。

3.衛生性を科学する
感覚的清潔感と科学的衛生性は全く異なります。放水することできれいになったと感じられる方もおられる湿式清掃ですが、多くの場合、湿式清掃の床からは莫大な菌が検出されます。これと比べると、触れたくないと思われる方もおられる便座や便器洗浄レバーから検出される菌数は皆無に近いのです。特に和式便器の周辺からは大量の大腸菌が検出され、それを靴で拾っている形跡も確認されました(*3)。スリッパを履きかえればよいというのも誤解で、それを子どもたちが手で触る可能性があれば、さらにリスクは高まります。和式便器を一つ残すことは感染リスクを残すことになります。全洋式化と乾式化を進めることが環境衛生につながります。また、子どもたちに神経質になることではなく、薬用液体石鹸による十分な手洗いを励行することこそ重要なことを伝えていくことが衛生教育であり、子どもたちの健康を守ることにつながるのです。

学校のトイレ研究会では、東日本大震災や熊本地震におきまして、避難所となった数多くの学校や体育館を調査させていただきました。熊本地震の避難所で生活されている方々にアンケート調査を実施させていただいた結果、地震直後の避難所で不便だったことは、食事や衣類、冷暖房をおさえ、圧倒的な第一位がトイレで、第二位が入浴・シャワーでした(*4)。また、その設備面で困ったことの第一位が、和式便器が多いことでした。東日本大震災後に避難所となっていた石巻市立湊小学校を調査させていただいた際、高齢女性の方から、「ここは全て洋式便器で良かった。違う避難所に避難された高齢女性の友人は、ほとんどが和式便器で使用が困難だったために、毎回ボランティアの女性がトイレの中まで一緒に入ってきて体を支えてくれた。しかし、それが忍びなくて別の避難所に移られた。」とのお話を伺いました。学校トイレには、災害時には避難者の排泄の尊厳を守る義務があることを、痛切に感じました。

今、洋式化をはじめとする学校トイレ環境改善の動きが、全国で急拡大しています。中には改修計画に児童・生徒の意見を取り入れた参加型トイレづくや、トイレの節水・節電をキーにしたエコスクール化への取組みなど、自治体と学校で協力した優れた活動も各地で拡大しています。前述の石巻市立湊小学校は、被災後半年以上の長期にわたり避難者の生活の場となりました。子どもたちが余計なストレスから解放されて、学習やスポーツに専念できる、家庭同様に安心できるトイレ空間を目指していくことが、いざというときに、被災者の生活を優しく支えることになるものと思います。改善要望が大きな分、改修されて環境が大きく改善されたとき、学校トイレほど関係者全員の笑顔につながるものも、他にはなかなかありません。優れた空間設備と清掃メンテナンス体制、そして教育の3つが適切に連動したときに、学校トイレは子どもたちと地域の新たな財産として生まれ変わります。皆様とともに、一歩一歩でも前進していければ幸いです。

*1:2016年『学校のトイレ研究誌19号』P10ご参照
*2:『学校トイレノウハウブック』P5ご参照
*3:2017年『学校のトイレ研究誌20号』P5ご参照
*4:2017年『学校のトイレ研究誌20号』P11ご参照



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