学校トイレのポイント

洋式化

大多数の子どもたちが洋式便器を支持する中、学校トイレはまだ3割以上が和式主体。オフィスや商業施設と比べて大幅に洋式化が遅れています。衛生性やユニバーサルデザインの観点から、全洋式化が急がれる5つの理由をご紹介します。

全洋式化が急がれる5つの理由

❶ 和式便器を残すと5Kから抜けられない

学校トイレの多くは和式便器が残っており、最も汚れがひどいのは、和式便器まわりの床。
和式便器はその形状から、尿便の飛散や臭気の拡散を防ぐことは極めて困難で、和式便器を1つでも残すと、トイレ全体の臭く汚いイメージを残してしまいます。

「公立学校施設のトイレ状況ついて」(2023年9月)

出典:文部科学省「公立学校施設のトイレ状況ついて」(2023年9月)

Q.トイレ内で汚れがひどい部分は?

学校のトイレ研究会「2015年度
全国公立小中学校アンケート調査」
(複数回答・上位7項目)

❷ 感覚的清潔感と実際の衛生性は全く異なる

TOTO総合研究所が某公立小学校で調査をした結果、湿式清掃や水栓ハンドルなど濡れた場所から大量の菌が検出され、洋式便座の菌数は皆無に近いことが確認されました。

学校トイレにおける菌数測定結果(CFU)

「某公立学校での調査(TOTO総合研究所調べ)」2012年7月

トイレ内糞便由来菌汚染度(大腸菌数CFU/cm2)

『2013年度第40回日本防菌防黴学会年次大会報告』
『2013年度空気調和・衛生工学会大会報告』
「某公立学校での調査(TOTO総合研究所調べ)」2012年7月

和式便器を1つ残すことは感染リスクを残すこと

特に和式便器のまわりからは多くの大腸菌も検出され、それを靴で運んでいると推察される形跡が確認されました。子どもたちが廊下や教室で床に座ったり、手を付くことは容易に想像され、和式便器を1つ残すことは感染リスクを残すことに繋がります。

❸ 医学的見地から洋式化・乾式化が急務

洋式化で子どもたちを健康障害から守る

明らかに子どもたちの便秘が増加しています。3,500人の子どもを対象とした済生会横浜市東部病院による調査では、実に7割の子どもが便秘の問題を抱えているという結果が出ています。重症化すると腹痛や便の漏れ、集中力がない、イライラ、食欲がないなどの健康障害を起こします。これには社会生活や食生活も影響していますが、学校トイレの劣悪な状況も大きく起因しています。最近はむしろ、からかいやいじめは減ってきています。とにかく汚くて臭く、和式便器がイヤだからトイレを我慢するのです。子どもにとっては、和式便器自体がカルチャーショックで、和式便器まわりへの便の飛散や付着は現実的には防げず、仮にもしロタウイルスの子どもが1人いれば、そこで爆発してしまうリスクもかかえています。

乾式化で子どもたちを感染から守る

湿式清掃は感染防御の視点からはありえない、これは感染管理の常識といえます。湿式清掃は極めてリスクが高いため、子どもたちには清掃させるべきではありません。乾式清掃化し、衛生管理を含む清掃教育を適切に行った上で清掃させるべきです。ただ単に道徳教育で清掃をさせるのは、本末転倒といえます。

さいたま市立病院
小児外科部長(取材当時)

中野 美和子 先生

中野 美和子 先生
便秘症が悪化した高学年男児の例

日本小児栄養消化器肝臓学会出席の医師51名に聞きました

Q.子どもたちが学校でトイレに行くことを我慢することは健康に悪影響を及ぼすことがあると思われますか?

出典:日本小児栄養消化器肝臓学会出席の医師へのアンケート調査(2018年10月)

❹ 災害避難所として洋式化が急務

学校避難所のトイレが和式便器主体であったため、高齢者や障がいのある方から悲痛なお声や、用足しの我慢による健康障害の報告が挙がっています。和式便器を残すのは、好みの問題ではなく、使えない人を多くつくることを認識しなくてはなりません。

❺ 将来の二重投資を防ぐため全洋式化を

TOTOの出荷実績で見ると、学校の洋式化は急速に進んでいます。内閣官房が2025年度までに「95%洋式化」という中長期目標を掲げたことで、今後さらに洋式化は加速すると思われます。

少数の和式支持の声を受けて一部和式を残したものの、結局和式は使われず、10年も経たないうちに再工事となり、無駄な二重投資を強いられた学校もあります。また、最新の節水型洋式便器は和式便器に比べて洗浄水量が少なく、ランニングコストにも跳ね返ります。将来を見越した計画と判断が必要です。

建築用途別 洋式化率推移