事例紹介
改修
笠松カサマツ町立笠松カサマツ中学校
(岐阜県羽島郡笠松町)
学校、PTA、地域、自治体、地元業者
みんなでつくりあげたトイレ
30年以上前からトイレが変わっていない
「トイレが汚いので、何とかしてほしい!」ある生徒の発言をきっかけに、2021年12月、笠松町で独自の「トイレ研究会」が発足しました。
トイレ研究会のメンバーは、笠松中学校の生徒会と教員、PTA、地域の代表者、笠松町、地元業者、そして、TOTOです。研究会の目的は、生徒や地域の人、業者など、さまざまな視点を取り入れることで、みんなにとって使いやすいトイレをつくること。もう一つ、隠れた目標が、本研究誌『学校トイレの挑戦!』に掲載されることだったといいます。
改修前のトイレは、床は湿式、便器もほとんどが和式でした。壁の一部は剥がれ、パーティションの下もぼろぼろ。中でも、つらかったのが臭いです。生徒会の生徒は「臭いが本当にひどくて、トイレの近くを通るだけで、服にしみつく感じがした」と語ります。
清掃時も、水をまいて、一生懸命ブラシで便器をこすっても、黒ずみや黄ばみなどの汚れは落ちませんでした。PTA会長・トイレ研究会副会長の安藤博之さんも「清掃方法が決して悪いわけではないのに、かわいそうだった」と話します。「私もこの学校の卒業生です。30年くらい前の話になりますが、トイレがそのときからほとんど変わっていない状態だったのです」
「みんなのトイレ」のコンセプト誕生まで
トイレ研究会発足後は、TOTOのセミナーを受け、生徒たちが理想のトイレプランを考えていきました。「セミナーによって、障がいのある人や、LGBTQの人たちがトイレで困っていることについて知ることができました。誰もが快適に過ごせるトイレのあり方を考えるきっかけになりました」(生徒会)
こうして生まれたのが「みんなのトイレ」というコンセプトです。生徒会は、バリアフリートイレや、段差のない入り口、性別や身体の状況に関係なく使えるトイレを要望しました。
その後は、設計者が提案したレイアウトをもとに、内装など具体的なデザインを決めていきました。「生徒会の皆さんは、とてもセンスがよかった」と話すのは、設計を担当した和田建築設計事務所の和田安弘さんです。「内装も、統一感があってきれいだと感じました。また、生徒さんのご要望で、荷物を置く棚も大きくしています。通常は10センチほどですが、笠松中学校では20センチもあるのですよ」
棚の他、トイレ内の大きな姿見鏡も生徒のアイデアです。
全員の協力があってこそ実現したトイレ改修
笠松町教育文化部教育文化課の林田純平さんは「『みんなのトイレ』というコンセプトがあったので、さまざまな人が利用しやすいよう、手すりもなるべく多く設置しました」と語ります。手すりを各所につけたのは、避難所になった際に、高齢の方が使用することも考慮したためだといいます。
改修したトイレは、床を乾式に変更するとともに、新たに温水洗浄便座を導入。感染症対策の観点から、手洗いも自動水栓を採用しました。照明や換気扇も、トイレ入室時に自動でスイッチが入るセンサータイプに変更。笠松町では現在、公共施設の自動水栓化も進めています。
笠松町教育文化部教育文化課の田上智也さんは話します。「今回の改修は、災害時など、設備に何かあったらすぐに駆けつけていただけるよう、地元の業者さんに入ってもらっています。『完成したから終わり』ではなく、これからも関係を続けていくことができればと考えています」
工事の途中、壁などをすべて剥がしたタイミングで、見学会も実施されました。こうして、2021年12月にトイレ研究会が発足してから、23年2月には改修工事が終了しました。「時間がない中、スピーディーに進められたのは、学校現場の声をダイレクトに吸い上げることができたのと、生徒会をはじめ、トイレ研究会の皆さんのおかげです」(田上さん)
今年度は、校舎の西舎のトイレを改修しました。次年度は、北舎の改修工事を進めていく予定です。「私たちが授業や部活動をしている間も、業者の方が働いてくださっていたり、理想のトイレを目指して、PTAの皆さんが協力してくださったりと、とても感謝しています」(生徒会)
見ているだけでわくわくするトイレに
2023年3月13日、トイレの完成を記念して、セレモニーが執り行われました。新しくなったトイレの前で、テープカットも実施。近くを通りかかった生徒も「すごくきれい」「早く使いたい」と、学校全体で「みんなのトイレ」のオープンを祝いました。
「壁や天井のデザインを決める際、どんなふうに仕上がるのか想像しづらい部分もあったのですが、完成したトイレはピカピカで、見ているだけでもわくわくしました。満足できるものになったと思っています」(生徒会)
笠松町立笠松中学校 DATA
名 称 | : | 笠松町立笠松中学校 |
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所在地 | : | 岐阜県羽島郡笠松町弥生町1 |
生徒数 | : | 558名(2022年5月) |
施 主 | : | 笠松町 |
設計 | : | 三翠建設コンサルタント、和田建築設計事務所 |
施 工 | : | 西垣ポンプ設備、サンセキ |
竣工年月 | : | 2023年2月 |